Limit Theoryの開発終了に伴い、これまでをまとめてみた

 

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Kickstarterで資金を集めたキャンペーンが頓挫してしまう、という悲しい出来事は残念ながら今日でも定期的に発生します。今回、なんと開発に6年も費やしたゲームが、最終的に開発を完遂できずギブアップするというニュースが流れてきました。そこで今日はそのタイトル、「Limit Theory」について当時から順を追って解説していきたいと思います。

Limit Theoryは宇宙を舞台にしたオープンワールドRPG

Limite Theoryは自動生成された宇宙を探索するオープンワールドRPGとしてスタートしました。明確なストーリーラインは無く、プレイヤーは境界の無い宇宙を自由に探索することが出来ます。

移動する艦船の他、艦隊や宇宙ステーションを構築することも出来、宇宙での営みを擬似体験するためのゲームとなっています。Kickstarterのキャンペーン開始時点では船のカスタマイズや宇宙の飛行シーンなど基本となる機能のプレイ動画が公開されました。

約2000万円を調達

www.kickstarter.com

Kickstarterは過去のキャンペーンページが全て保存されている為、当時のページを閲覧することが出来ます。2012年というとKickstarterにおけるゲームの資金調達が特に盛んだったことですね。

当時キャンペーンに参加した人は約5400人、出資金額は約2000万円でした。

リワードの内訳を調べてみると15~20ドルのゲーム本体を約3000名が購入、1000ドルの豪華パッケージも8名が買っています。

実際は6年に渡る開発期間の間にこの資金は使い果たしてしまった様です。一般的にクラウドファンディングではリワードを製造する都合上、集まった資金の全てを開発費に回すことはできません。この場合、リワードに登録されたCD版、Tシャツ、書籍などの製造費がかかってきます。ただし、最終的なゲームが完成していないことを考えると、この2000万円を使ってもなお開発資金が足りなかった実情が想像できますね。不足分は開発者の自己資金で賄っていたようです。

2015年には開発者の体調不良が深刻化

jp.gamesindustry.biz

長期化する開発にJosh Parnell氏は精神を病み、2015年にはその問題が深刻化しました。

その時の心情を吐露した記事の日本語版が今も閲覧できます。Josh Parnell氏はテネシー州の山小屋で一人開発作業を進めていたようですが、のどかで集中できると考えた自然の中で一人机に座って開発を続けるという環境に徐々に精神を病んでしまったと語っています。

また同氏はゲーム音楽以外は外注を用いず文字通り一人で開発を行っていたそうです。外注への支払いで資金繰りが悪化するということは無かったようですが、その分膨大なコードを一人で管理しなければならず、10万行に及ぶベースコードは管理困難な状況に陥ってしまいました。

上記の記事は2017年に公開されたものですが、開発体制を変えながらもこの頃はまだ開発を継続していた様です。

ゲームは正式に開発中止に

しかし残念ながら今年9月、Josh Parnell氏は正式にLimit Theoryの開発の終了をアナウンスしました。6年に渡る開発期間で資金は個人の貯蓄も含め使い果たし、健康面でも多くの不安を抱えることとなったのが主な原因の様です。2000万円の開発資金は返金の目処は立っていません。

また開発を断念するが、心残りの清算としてソースコードは公開されるようです。ただしこれ単体でゲームを動かすことは出来ず、開発が引き継がれることは恐らく無いでしょう。

開発終了に当たり、Kickstarterページには多くのコメントが投稿されています。6年にも渡る開発期間のため、既に3000のコメントが投稿されています。これはKickstarterのキャンペーンの中でもかなり珍しいです(多くの場合、バッカーはコメント機能より直接のメールを好む

その内容は様々で、同氏への返金を求めるコメントや結構辛らつなコメントも有りますが、長い開発期間を一人で過ごしてきた苦労を労うコメントも多数寄せられています。中には今でも動作する体験版を待つ人もいます。一方で、Kickstarterで資金を集めたキャンペーンが完成まで漕ぎ着けないことの多さを嘆く人もいます。正直コメント欄は見ていて辛い…。

 

最後に、同氏の残した言葉を添えてこの記事を終えたいと思います。

「あなたの情熱はインディ開発者としてとても素晴らしいものです。……半面,それはまったく危険でもあります。なぜなら,それが作業,あるいはあなたの人生を消費するものになった途端,すべてが変わるからです」