Quickstarterは普通にKickstarterに出すより難しいかもしれない

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2018年にKickstarterは新サービス、Quickstarterをローンチしました。Quickの名の通り、より小さくササッと作ったプロジェクト向けの企画となっています。ただその条件を見るとキャンペーン運営者的には結構くせ者かもしれません。

実は少額キャンペーンはかなり数が多い

1億円超えの実例も有るKickstarterですが、一部のクラウドファンディングエリートのものではなく、実際は小規模なキャンペーンも相当数存在します。

例えばKickstarterで1億円を達成したキャンペーンは300ほどですが、100万円程集めたキャンペーンは5万以上存在します。Quickstarterがターゲットにしているそれ以下のキャンペーンは更に多いことでしょう。

Quickstarterは10万円や100万円規模の金額を目標とした小さなキャンペーンにスポットを当てるものとして考案されました。

www.crowdfundingweak.com

私が先日紹介したこれもQuickstarter案件でしたが、最終的に100万円近い出資金が集まり、Quickstarterの中ではかなりの成功案件となりました。ただしこれはKickstarterのお気に入りであるProject We Loveに選ばれているので、純粋にQuickstarterのポテンシャルを知るモデルケースとしてはふさわしくないかもしれません。

実際には数万円も集まらず失敗となるケースも散見され、かなり難しい印象を受けます。

Quickstarterの利用条件は結構細かい

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まずQuickstarterの利用条件を確認してみましょう。Quickstarterのキャンペーンとして出展するには以下の要素を満たす必要が有ります。

・企画は3ヶ月以内に考案したこと
・キャンペーンは20日以下
・ファンディングゴール(目標調達額)は10万円以下
・1回のリワード(支援額)は5000円以下
・紹介ビデオは1日で作ること
・メディアへのPR、プレスリリースの類いは禁止
・ストレッチゴールは禁止
・キャンペーン名にQuickstarterを加える
・ソーシャルメディアに広告を掲載しない

とキャンペーンを制約するルールが9つ有ります。

個人的な感想としては、いくら小規模キャンペーンとはいえこのルールはあまりにも厳しすぎるように思います。

まず構想3ヶ月以内の企画というのは大規模キャンペーンを弾くには良い条件と言えます。特に開発に時間のかかるプロのガジェット系の案件は排除できます。キャンペーン期間も20日あれば十分です。

しかしリワードの価格上限は非常に痛い。あまりにリワードの単価が低いと、バッカーが集まっても調達額が伸びません。更にPRはWebサイト、ソーシャルメディア含め禁止されているのはあまりにも厳しい印象です・・・広告を打たなくても見てくれる既存ファンのいない人は一体どうやって広告しろというのでしょう?大抵の人はSNSで1000人もフォロワーがいないというのにですよ?

Kickstarterで注目を集めるにはPR戦略が絶対に必要

まず第一前提としてKickstarterに出展するだけでは他人の注目を集めることは不可能です。これはKickstarterに限らず多くのクラウドファンディングサイトでもそうです。

勿論優れたキャンペーンページを運営サイドがブラッシュアップしてくれることは有りますが、そのための見栄えのする写真や動画を作るにはやっぱりお金がかかるのです。

更にKickstarter以外で集客する為にTwitterやYouTubeに広告を出したり、メディア向けにサンプルを送って記事を書いてもらったりします。

結果的に、最近のクラウドファンディングは資金力の有る企業が有利な一面が有りましたし、Quickstarterがそうした風潮のアンチテーゼとして生まれたことには一定の理解ができます。しかし広告という武器を持たされずクラウドファンディングに挑むのは、裸で太平洋を泳いで渡ろうとする様な物です。それほど賢くない人でも船を用意するでしょう。

正直Quickstarterの条件を律儀に守るくらいなら、通常のキャンペーンとして出して広告を打っていく方が余程資金は集まると思います。その分をKickstarterが補間してくれるというなら話は別ですが、あまりそういったことは期待できないように思います。敢えてQuickstarterを利用する本質的なメリットが全く見えません。

より小規模なキャンペーンに焦点を当てたQuickstarterの企画そのものは理解できますが、これでは自爆しろと言わんばかりの厳しい制約下に置かれています。

一応Kickstarterとしては10万円から100万円クラスの資金調達を想定のゴールとしているようですが、この条件では嫌でもその水準かそれ以下に収まります。

そもそもKickstarterの審査はきつくない

Quickstarterに申請してくるキャンペーンがより簡素で試作もままならないものであることを見越して、Kickstarterは審査の簡略化を示唆しています。

しかし実際にKickstarterの審査を受けた感想ですが、Kickstarterの審査はそこまで厳しくないです。むしろKickstarterの審査を通らないならまだクラウドファンディングする段階に無いほど未完成と考えて良いです。

条件を見た限りではQuickstarterの利用はリスクが大きすぎて怖すぎる

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クラウドファンディングはPRが大事、見られてなんぼの世界なのでPRに非常に厳しい制約を設けられているQuickstarterというサービスはとにかく恐ろしいです。

勿論失敗しても支障の無いキャンペーンなら問題有りませんが、大事な企画をQuickstarterで行うのはかなりためらう物が有ります。

正直言って私はKickstarter利用者としてQuickstarterをおすすめしづらいです。それくらい制約が厳しい。ぶっちゃけてしまうとQuickstarterに出すことそのものが最大のリスク要因です。

この記事の執筆現在、Kickstarter運営とも打ち合わせを行っているので、もう少し色好い話も聞けるかもしれません。その時は改めて追記したいと思います。

【追記】Quickstarterの優遇処置は特に無し

Quickstarterに関してKickstarter公式サイドより回答を頂きました。内容としては以下の様なものです。

・Kickstarterのサイト利用者をターゲットとしない。家族、友人、同僚にアプローチするのが正しい。

・ソーシャルメディアは宣伝の手段として非常に強力、だけどQuickstarterでは優良の宣伝は禁止

・自分に類似するキャンペーンに参加して宣伝の方法を学んだほうが良い

内容はかなりテンプレというかコピペめいたメールが返って来ました。しかも結構突き放した内容ですね…Kickstarterを当てにするな、という感じの内容になっていました。