【追記有】キングジムの新型ポメラDM30がKickstarterにてクラウドファンディングをスタート!

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キングジムはE Ink製電子ペーパーをディスプレイに採用したテキスト入力用モバイル端末、DM30をアメリカのクラウドファンディングサイト、Kickstarterに出展しました。これは日本で現在市販されているモデルで、アメリカ市場へのテストマーケティングとしてキャンペーンを開催します。

ポメラシリーズって?

ポメラシリーズはモノクロ液晶とキーボードが一体になったテキスト入力用端末で、ライターやブロガーなど、大量のテキストを入力するプロ・ハイアマチュアに支持されています。

かくいう私もポメラの大ファンで、この記事もフラッグシップモデルのDM200で執筆しています。とにかく入力速度を上げて時間効率を良くしたい人に最適のアイテムです。

一方でノートPCの様なマルチメディア対応の端末ではなく、テキスト入力に特化した非常に割り切った端末の為、特定ユーザーにヒットするニッチなガジェットです。

DM30の特徴って?

DM200は出先でも使いたいほど完成度の高い端末ですが、モバイル用にはもっと軽い方が良いな、と思っていました。

そこでキングジムが開発したのがコンパクト化したDM30です。キーボードは3つ折りになり、収納時に無駄のない筐体になっています。カフェに持ち込んで入力作業を行うならDM30の方が圧倒的におすすめです。

本体を乾電池の駆動にしたことで電力供給に不安の有る屋外でも、20時間の安定動作が可能になっています。

更にディスプレイをポメラシリーズで初となるE-Inkを採用したことで目に優しく、長時間のライティングに適した端末に仕上がっています。内蔵するATOK for pomeraの変換の出来はとても良く、入力・変換時のストレスも少ないです。

内部のテキストファイルはUSB接続かSDカードによる取り出し、更に専用アプリによる読み込みに対応しています(個人的にWi-fiにも対応して欲しかった

これは日本向けに既に販売されており、Amazonなどを通じて購入することが可能です。

今回は北米エリアのテストマーケティングが目的

さて、いよいよ本題のクラウドファンディングについてです。

現在、ポメラシリーズは海外での展開は行われていません。しかしその第一歩として北米エリアでの販売をメーカーのキングジムは検討しています。今回のKickstarterでのキャンペーンが成功すれば、本格的な海外展開を進めていくつもりなのでしょう。

目標額は1000万円に設定し、DM30の販売をメインのリワードに設定しています。アーリーバード割引が設定され、早期に注文を行った人ほど安く購入できる仕組みです。

キーレイアウトを北米仕様に変更したり、このキャンペーンに合わせて独自のカスタマイズを施し、北米ユーザーにも受け入れられる様に調整が施されています。

www.kickstarter.com

【追記】キャンペーン期間終了も目標達成率は35%ほどに留まる

残念ながらDM30は目標額の1000万円に対し、達成率が約35%ほどに留まったことで資金調達失敗となってしまいました。

キングジムというメーカー主導のクラウドファンディングで一体何がいけなかったのでしょうか?

実はこのキャンペーンにはクラウドファンディングでやってはいけないことがいくつか含まれており、今後の参考のためにもそれらを以下にまとめてみたいと思います。

ファンのいない所にキャンペーンを出してしまった

現在、キングジムは海外展開を行っておらず、北米地域での需要を測るテストマーケティングとして今回のキャンペーンが企画されました。

つまり「販売実績の乏しいエリア」で「新規顧客」向けにキャンペーンをスタートさせたわけです。

実はクラウドファンディングのキャンペーンを大きく伸ばすのは既存のファン達です。彼らはSNSのシェアなどキャンペーンが話題になるために非常に重要な役割を担っています。
芸能人のクラウドファンディングが上手くいくのも、この「既存ファン」という点で大きな下積みがあるからです。しかし知名度のないところで新規ファンを獲得する際、クラウドファンディングは全く役に立ちません。

重要なのは「既存ファンが応援する→新規顧客が集まってくる」。このプロセスです。この点を踏襲しなかった点で、早期から伸び悩むことになってしまいました。

告知期間が十分ではなかった

Webメディア向けのプレスリリースが公開されたのは、キングジムがKickstarterにてキャンペーンを開始するほぼ同時でした。

結果的にポメラシリーズを既に知っている、あるいはガジェット好きなKickstarterユーザーには刺さったと思うのですが、このキャンペーンへの新規のファンを造成するという当初の目的を達成できなかった可能性があります。

というのもクラウドファンディングを行っただけでは新規顧客にそれほどリーチ出来ないからです。

告知期間を十分設けないのはクラウドファンディングにありがちなミスで、実際はキャンペーンの開始前に目標額のほとんどを達成するだけの盛り上がりを演出する必要が有ります。

キャンペーン初期のファンによる購入が一巡すると急激に失速してしまったのは認知度の不足が考えられます。

リワード設定に問題が有った(価格・発送範囲

今回のDM30の単価はアーリーバード割引を適用しても38000円と非常に高価です。日本市場ではポメラの販売実績が有るため、この価格でも販売台数が伸びますが、全くの新規市場でモノクロ液晶のポータブル機の価格としては割高感はぬぐえません。

ちなみに国内の市場価格とほぼ同価格なのですが、アーリーバード割引であることを考えるともっと大胆な値引きがあっても良かったと思います。

更に目標額との兼ね合いの悪さも感じます。リワードが3つしか設定されておらず、目標額1000万円を達成するにはDM30が200個以上売れないと達成できない計算でした。つまりバッカー数200名以上が必要ということです。
これだけのバッカー数を集めるなら、自社製品を使ってくれるかもしれない見込み客に新製品向けの広告など事前のロビー活動が必要だったのではないでしょうか。

また発送範囲が「アメリカ合衆国のみ」とした点も足を引っ張った可能性があります。今回のキャンペーンはあくまでアメリカ市場のテストマーケティングと位置づけられ、アメリカ以外からの注文に対応しませんでした。しかしKickstarterにはアメリカ以外のユーザーも沢山いるわけです。

このキャンペーンがスタートしたときは国内メディアが揃って取り扱いました。その内、熱心な日本人ファンが支援したことも明らかになっており、もう少しアメリカ以外のユーザーへのサポートがあっても良かったと思います。

仮に発送地域を全世界にすれば目標額達成も可能だったことでしょう。しかし発送地域を絞ったことで100名近いアメリカのバッカーを獲得した段階で勢いがストップしてしまいました。

目標額が高すぎた

今回の目標額1000万円は実績の無いプロジェクト立案者の目標としてはかなり高かった様に思います。最終的に1000万円を超える支援額が集まったケースは多々有りますが、最初のゴールの金額設定としては高かった印象です。

キングジムサイドからすると筐体の開発費やアメリカ市場向けの仕様変更などを考慮すれば1000万円という調達額はすぐに消えてしまうものでしょう。それでもKickstarter内での支援の集まるペースなどを考えたときに、1000万円の壁は高すぎました。

通常、キャンペーンの終了24時間前には支援が集中する傾向があり、5%ほど調達額を押し上げるインセンティブが働きます。しかし今回はそれを持ってしても目標達成までが遠かったです。ユーザーサイドとしては無理してでも達成させたいという気持ちにならなかった可能性があります。

アップデート回数も少なすぎた可能性

キャンペーン期間中のアップデートはユーザーとの結びつきを強くする大切なものです。多くのファンがアップデートにいいね!を付けたり、積極的な支持を表明してくれます。

キャンペーン期間中、キングジムはわずか3回しかアップデートを行っていません(このブログでの推奨回数は最低10回以上

ブログなどでもそうですが、週1回以下の更新ペースでは中々ファンを作っていくということは難しいです。

結果的にこのキャンペーンは立てた後に放置されている印象をユーザーに与えてしまった可能性が強いです。
更に終了間際には完全に更新が放置されたことで、閑散とした雰囲気になってしまいました。